倉庫業を始めるにあたっては、原則として国土交通大臣の登録(いわゆる「倉庫業登録」)が必要ですが、すべての倉庫が対象になるわけではありません。一定の用途・形態によっては「許可・登録が不要」となるケースも存在します。
本記事では、倉庫業の許可が不要な代表的事例と、登録が不要となる理由について解説します。
そもそも倉庫業とは?
「倉庫業」とは、寄託を受けた物品を保管する事業であり、倉庫業法により登録が必要です。ここで重要なのは、次の3つの要素です:
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他人からの「寄託(預かり)」
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有償性(対価を得て行う)
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営業として反復継続的に行う
この3要素のいずれかが欠ける場合、倉庫業に該当せず、登録が不要になる場合があります。
許可・登録が不要なケース
以下は、実務上よくある「登録が不要な倉庫業類似行為」の代表例です。
1. 自家使用(自己保管)目的の倉庫
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例:製造業者が自社商品を保管するための物流センター
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理由:寄託ではなく自己保管であるため、倉庫業には該当しません。
2. 無償で保管する場合
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例:知人の荷物を無料で一時的に預かる
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理由:有償性がないため、業としての倉庫業ではありません。
3. 貸倉庫・トランクルーム形式(契約形態が寄託でない)
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例:コンテナ型トランクルーム業、レンタル収納スペース業など
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理由:保管契約が**賃貸借契約に基づくもの(占有権は利用者)**であり、寄託契約ではないため、倉庫業法の対象外です。
⚠ ただし、利用者が自由に出入りできない、実態として預かり(寄託)に近い場合は「倉庫業」に該当する可能性があるため、注意が必要です。
4. 農業協同組合などの一部団体による保管
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例:農協が組合員向けに穀物や肥料を保管する場合
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理由:一定の非営利団体や共済組織による限定的な保管業務は、倉庫業法の適用除外となる場合があります(詳細は国交省のガイドライン等を参照)。
登録が必要か迷ったときの対応
倉庫業に該当するか否かの判断は、契約の実態や業態によって左右されます。判断に迷う場合は、以下の対応が推奨されます。
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国土交通省または地方運輸局への事前相談
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契約形態(賃貸借か寄託か)の見直し
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専門士業(行政書士、弁護士など)への確認
まとめ
ケース | 倉庫業登録の要否 | 備考 |
---|---|---|
自社倉庫で自己物品を保管 | 不要 | 自己完結で寄託なし |
無償で保管する | 不要 | 有償性がない |
トランクルーム・貸倉庫 | 原則不要 | 賃貸借で占有権が利用者にある |
他人から有償で物品を預かる | 必要 | 寄託契約・対価ありなら倉庫業に該当 |
農協・漁協による組合員保管 | 原則不要 | 非営利団体の特例に該当 |